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大分の民話 吉四六さん

日本で一番ふるい本である「古事記」では、大分県のことを「豊の国」とよんでいます。
光と風が豊かで、山の幸や海の幸にも恵まれた豊かな国だったからでしょう。
もちろん、そこに住む人の心も豊かだったにちがいありません。

大分に伝わる民話で有名な吉四六(きっちよむさん)さんのお話です。
ちなみに大分県臼杵市野津にある手話サークル名は「吉四六」です。

民話 吉四六話より  天のぼり

昔、野津市村に吉四六さんというとってもとんちがいいしがおったんと。

やせ馬じゃあけど百姓にゃ大事なもんで、馬か牛がおらにゃあどうしてん五月にゃあたっちいかんわけじゃな。それに、銭ぐそひるじゃんいうち、やせ馬売っちしもうち、田植はするこたならん。
なんとか田植えをするこたあできんもんじゃろうかと考えよったち。

ところが、ひょんと思いついち、「よし、いいこつがある。」ちゅうのんじ、吉四六さん、ある夕方、村ん方を向いち、「あした、おりや、天にのぼろうと思う。そやき、みんな、すまんけんど おりかたん前に来ち、そん、見送っちくれんじゃろうか。」ち、おらぶもんじゃき、村んしはたまがっちしもうち、あしたになると、あら、わんさ、くるわくるわ、みんなしち、「こらあ、吉四六が天にのぼるちゃ、どういうこつか。」ちいうたち。

ほったら、「おりや、もう、家におっち百姓しても思うとおりにゃいかん、食うのも困ることじやき天にあがりや、まあ、なんとか食うことんぐれ、できるかんしれん。そりじやき天にあがろうと思う。なげえことたいへんおせわになりやんした。」

ち、いうち、みんなから、せんべつもろたり、前ん田のなけえ、はしごかけち、ごそりごそりのぼりかけたち。
上にあがる時、「おまえど、よっぽどすまんけど、吉四六ん天のぼりはあぶないもんじゃ。あぶないもんじゃ、ち、下じおらんじくれんじゃろうか。そりじ、おりやあ、みんなからはげまされち、上んごとあがるこつができる。まあ、たのむき。」ち、たのんだち。

村んしは、「そら、まあ、そげするくれえじゃねえ。たいこをもっちきち、盆おどりみたごつしち、吉四六ん天のぼりはあぶねえもんじゃ、吉四六ん天のぼりはあぶねえもんじゃ、ち、しちやるわい。」
ち、いうち、みんなじ田ん中で、「吉四六ん天のぼりはあぶねえもんじゃ。吉四六ん天のぼりはあぶねえもんじゃ。」ち、いうたっち踊ってまわったんじゃ。

だんだん上んごつあがった吉四六は、じつと下を見ち、うん、おおかた田がねれたごちあるなちゅうこって、「そげえ、お前んじょうがあぶねえちいうなら、おりやあ、いっしょうけんめい上んごつ、あがろうと思うたけんど、もう、おりも、おりるわい。」ち、ごそごそおれちきたち。

村んしは「天にのぼったっちゃどけなるかや。まあ、今まで久しゅう、つきおうちきたんじゃき、 いっしょにおりやいいじゃねえか。」ちゅうようなこつで、さっさ、いんでしもうたち。

吉四六はあとじ、「ああ、これじ、あした田植えがでくる。」ち、たいそうよろこんだんとう。
大分の民話 吉四六さん_e0209208_415839.jpg

by zentsuken2011oita | 2011-03-07 02:21 | 秘密でない県民シリーズ
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